#02「魔術師と呼ばれた男」 2003.01.19.
勸酒
勸君金屈巵 滿酌不須辭 花發多風雨 人生足別離
先日、国語の先生の机の上に井伏鱒二の詩集を見つけた。井伏鱒二なんて、昔、国語の教科書に載っていた「山椒魚」しか読んだことがないし、詩集に関しては誰のものだろうと手に取ったこともない。だから当然置いてあったその本に興味を持つ必然的な理由などあるはずもなかった。しかし何かが引っかかった。ブックケースに付いている帯に目が行った。上記の漢詩が書いてあったのだが、もちろん井伏鱒二、詩集と同様に漢詩にも興味はない。俺の目を引いたのは、その横に添えてあった井伏鱒二の訳だった。
この杯を受けてくれ
どうかナミナミ注がせておくれ
花に嵐のたとえもあるぞ
「サヨナラ」だけが人生だ
どんな人でも最後の一文は耳にしたことがあるだろう。この本を見るまでは古い歌の文句か何かだと思っていた。これが漢詩の訳だということを知っていた人は少ないだろう。おそらく遠方に旅立つ友と最後の酒を酌み交わしている様子と思われる。いったいどんな酒を飲んでいたのだろう?日本酒?いや、漢詩だから中国の酒かな。
「白乾児(ぱいかる)」かもね
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